Ⅱ-8 新型インフルエンザ等BCPについて

8 新型インフルエンザ等BCPについて

1)新型インフルエンザ等感染症とは

「感染症法」(平成10年10月2日法律第114号)では、感染症は、従来、その危険性が高い順に、エボラ出血熱などの「一類感染症」からアメーバ赤痢などの「五類感染症」までの5種類と、以上に分類されないが一~三類に準じた対応が必要なH7N9型鳥インフルエンザなど「指定感染症」、さらに既知の感染症とは明らかに症状などが異なり、かつ、危険性が極めて高い「新感染症」の7種類に分類されていました。

これに対し、「人から人に伝染する能力を有することとなったウイルスを病原体とするインフルエンザであって、一般に国民が当該感染症に対する免疫を獲得していないことから、当該感染症の全国的かつ急速なまん延により国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがあると認められているもの」が「新型インフルエンザ等感染症」として追加されました(平成20年5月)。2009(平成21)年に流行したA(H1N1)ウイルスによるインフルエンザの流行(通称「豚インフルエンザ」)がこれに当たります。

併せて、国は、鳥インフルエンザが新型インフルエンザに変異した場合を想定して、「新型インフルエンザ対策行動計画」を策定、県・市町村も同様の行動計画を設けています(2009年の流行は、想定したウイルスではなく、健康被害の程度も異なったため、国は「基本対処方針」を示し、地域はその実情に応じて柔軟に対応することとしました)。

2)市町村の行動計画について

一類感染症(および二類感染症)の患者の入院治療を担当できる規準に合致する病床を有する医療機関が第一種感染症指定医療機関で、都道府県知事が指定し、原則として都道府県ごとに1か所あります。長野県では、長野県立須坂病院がこれに当たります。二類感染症に対応するのが第二種感染症指定医療機関で、原則として二次医療圏ごとに1か所。近隣では、北信総合病院、長野赤十字病院、長野松代総合病院、および県立須坂病院です。

「須坂市新型インフルエンザ対策行動計画」(第1版:2009年)によると、新型インフルエンザが大流行した場合(まん延期)、市内で人口の25%に当たる1万3,000人余りが感染し、入院患者は約1,000人、死亡者は約2,300人と推定されています。このとき、市には須坂市長を本部長とする新型インフルエンザパンデミック対策本部が設置され、須高薬剤師会はその本部員となります。また、保健センターに相談所、県立須坂病院を含む市内3か所に発熱外来が設けられます。

新型インフルエンザの発生段階は、前段階・第一~四の5段階に分かれます。対策はそれぞれの段階に応じて計画されますが、このうち、「基本的な取り組み」および「医療体制」について示すと次のとおりです。

→表Ⅱ-8-1

3)薬局の新型インフルエンザBCP

日本薬剤師会は「新型インフルエンザ等発生期における業務継続計画(案)」の「薬局向け作成例」を示しています(2014年1月)。さらに、横浜市薬剤師会が薬局BCPのひな形を提示しているので、併せて、検討します。

[はじめに]

○各発生段階の医療体制(括弧内は「須坂市新型インフルエンザ等対策行動計画」)

→表Ⅱ-8-2

○意思決定体制の構築

新型インフルエンザ等の発生時における薬局BCP体制立ち上げ、およびその縮小等について決定者(および代理者、ならびに指揮命令系統)を定めます。

 

[未発生期の対応]

1 新型インフルエンザ等発生時の業務体制確保の準備

(1)優先業務の決定と流行への備え ○当薬局における業務内容について、優先順位を以下のように決定(準備)する[別紙1]。

A〈高い〉市内感染期でも通常時と同様に継続すべき業務
B〈中程度〉市内感染期には一定期間またはある程度の規模であれば縮小できる業務
C〈低い〉市内感染期には緊急の場合を除き延期できる業務

○日頃からそれぞれの社員がさまざまな業務を行えるよう教育訓練を行う。
○薬局の薬剤師全員が新型インフルエンザ等に罹患し業務に従事できない期間は、休局とする。

(2)業務に確保できる人員と対応能力の評価 ○市内感染期においても出勤でき、対応可能な社員数を検討し、リストを作成する[別紙2]。
(3)連絡体制、通勤経路 ○薬局内連絡網[別紙3]

○各職員(非常勤含む)の主な通勤経路・所要時間一覧[別紙4]

2 感染対策の充実

(1)感染対策マニュアルの整備 ○薬局内感染対策マニュアルを見直し(作成し)、新型インフルエンザ等対策を踏まえて整備する[別紙5]。
(2)教育と研修 ○患者と社員の安全確保のため、新型インフルエンザ等に対する基礎知識、マスクや手袋などの個人防護具の適切な使用法等について定期的に研修を行う。
(3)特定接種への登録 ○薬局長は、当薬局が特定接種の登録事業者になる場合は、所定の手続きを行い、厚生労働省へ登録する。

3 在庫管理

 ○平時より実施している医薬品・医療材料等の在庫管理に加え、当薬局の医薬品・医療材料取り扱い業者と連携し、新型インフルエンザ等発生時の必須医薬品、感染対策用品等のリスト[別紙6]を作成し、入手方法を確認しておく。

__医薬品:抗インフルエンザウイルス薬、インフルエンザ迅速診断キット等
__感染対策用品:マスク、手袋、ガウン、ゴーグル、手指消毒剤等

[海外発生期以降の対応]

1 処方せん応需体制

→表Ⅱ-8-3

2 社員・スタッフへの対応

(1)社員・スタッフの健康管理と安全確保 ○社員・スタッフへの感染予防のため、新型インフルエンザ等の感染が疑われる患者と接触する場合には、その状況に合わせて個人防護具を適切に使用する。

○社員・スタッフは手指衛生をはじめとして科学的根拠に基づく適切な感染対策を行い、万全を期す。

○社員・スタッフ等が新型インフルエンザ等に感染したと疑われる場合は、速やかに薬局長(緊急連絡網[別紙3]に定める)に連絡する。原則として社員・スタッフ本人が感染した場合は病気休暇(病休)として取り扱う。家族等が感染した場合で本人への感染が強く疑われる場合は、薬局長(指揮命令系統[別紙3]に定める)の判断で休みとする。

○薬局長(総務部長)は、十分な感染防止策を行わずに患者に濃厚接触した者には、抗インフルエンザウイルス薬の予防投与について検討するため、医療機関受診を勧める。

○特定接種登録した場合は、特定接種開始後速やかに、対象職員にワクチン接種を行う。

(2)社員・スタッフ体制の見直し ○市内発生早期以降、連絡網、通勤経路などを見直す。[別紙3、4]

例:薬局の機能維持のために、社員・スタッフの児の学校の臨時休校・要看護者発生時等の社員・スタッフ欠勤時対応について毎週検討する。

例:定例ミーティングで職員の出勤状況を確認。

例:定例ミーティングで来週の予定、代替者の必要性、診療内容の変更を検討。

○市内発生早期以降、市内の流行状況や重篤度に応じて優先業務[別紙1]について検討し、当院の社員・スタッフ体制を見直す。[別紙2]

例:薬剤師の○○が新型インフルエンザ等に罹患し勤務不能となり、通常体制を維持することが困難になったときは、業務時間を午前のみとし、その他の必要な業務は午後に行う。

例:受付の○○が欠勤の場合は、薬剤師の○○が受付業務を代行する。

例:薬剤師の○○と受付の○○がともに欠勤の際は、新患対応を休止し、当薬局を継続利用している病状が安定した慢性疾患に対する対応のみとする。

例:非常勤薬剤師(○○、携帯0123-4567-8900)が欠勤の場合は薬局長が代行する。

例:在宅訪問は○○が可能な限り市内感染期でも継続する。

○その他

3 地域/通院患者への情報周知

継続利用者への情報周知 ○当薬局においては流行期に対応した啓発・広報活動を行う。特に、新型インフルエンザ等に罹患した際の療養方法、手指衛生、咳エチケット、感染対策用品(マスク、手袋)の使い方等、感染拡大防止のために個人や家庭ができることについて、利用者に周知する。

○海外発生期以降、当薬局ホームページ内に新型インフルエンザ等に関する項目を追加し、随時更新する(必ず更新日を記載)。

○当薬局における新型インフルエンザ等患者の対応方針を薬局内ポスター、張り紙等により周知する。

4 事務機能の維持

(1)事務部門 ○各種物品の調達や機器の整備・修繕、一般電話対応等、調剤業務を継続する上で必要な業務を優先的に行う。

○全社員・スタッフ及びその家族の健康状況等を把握するとともに、予防接種等、社員・スタッフの業務継続に必要なことを優先的に実施する。

(2)委託業者との連携 ○清掃、物品管理、警備など委託している業務については、新型インフルエンザ等の市内感染期の対応について、当薬局の受託業者と事前に打ち合わせを行う。
 (3)業者連絡先リスト ○医薬品取扱い業者リスト[別紙8]

○委託業者リスト(清掃、廃棄物処理、警備、施設メンテナンス等)[別紙9]

[地域における連携体制]

(1)地域の連絡会議に参加 ○未発生期に市町村・保健所・薬剤師会等の地域の連絡会議に参加し、地域における各医療機関の外来・入院に関する方針、当薬局の役割を連携病院と確認する。
(2)医療機関との連携 ○連携機関リスト(行政機関・医療機関等)[別紙10]。
(3)その他

[作成・常備すべき別紙(チェックリスト)](作成例略)

別紙1 業務内容の優先順位(A・B・C)
別紙2 市内感染期に対応可能な社員・スタッフ(通常社員・スタッフの40%が感染すると想定して受け入れ能力を算定する)
別紙3 薬局内連絡網(併せて指揮命令系統明示)
別紙4 各社員・スタッフの主な通勤経路・所要時間一覧(緊急時対応)
別紙5 薬局内感染対策マニュアル
別紙6 新型インフルエンザ等発生時の必須医薬品および感染対策用品リスト
別紙7 当薬局における時間的・空間的分離対策(入口への張り紙、分離の具体例(図解))
別紙8 医薬品取扱い業者リスト
別紙9 委託業者リスト(清掃、廃棄物処理、警備、施設・機器・情報処理メンテナンス等)
別紙10 連携機関リスト(行政機関・医療機関等)

お気軽にお問い合わせください。 TEL 026‐257‐3077 中島薬局:8:45~19:30(日・祝日は19:00まで)

PAGETOP
Copyright © 株式会社 中島薬局 All Rights Reserved.
Powered by WordPress & BizVektor Theme by Vektor,Inc. technology.