Ⅰ-2 BCP策定のポイント

2 BCP策定のポイント

東日本大震災をはじめとする最近の被災経験から、BCPの上で有用ないくつかのポイントが浮かび上がってきました。BCPを机上の空論としないために、ここではまず実際に役立った対応事例を紹介し、BCP策定の参考にしたいと思います(「中小企業の事業継続計画(BCP)〈災害対応事例からみるポイント〉中小企業庁)。

1)まず従業員の安否を確認

「従業員の安全がすべて確認できていたことが多くの自信を与えてくれた」という経営者の言葉があります。壊滅的な被害をこうむった状況にあって、すべての従業員の安全が確認できたとき、これに力を得て、再び前を向いて立ち上がる気持ちになったというのです。従業員の安否確認は迅速に実施し、またその仕組みを構築する必要があります。

2)復旧目標を宣言

「全従業員を集めて朝礼を行い、『被害は大きいが大丈夫だ! 秋口の仕込みに必ず間に合わせる』と宣言した。これは、従業員の動揺を鎮めるだけでなく、自分自身の動揺を抑えるのにも効果があった」という経営者がいます。経営者が従業員に対し事業再開の具体的な目標を宣言し、トップダウンで強力なリーダーシップを発揮することが、震災のような危機を乗り越えるために必要です。

3)継続する業務の選択

一般にBCPにおいては、被災の結果、極めて制約された経営資源(ヒト、モノ、カネ、情報)を、最も重要な業務に集中しなければならない、そのために、あらかじめその業務を選択しておく必要がある、と説明されます。しかし、その選択の仕方は一様ではありません。大口の取引先に絞るのか、出荷を最小にしてすべての取引先と関係を保つのかなど、対処の仕方は最終的には経営判断にゆだねられるのです。

4)代替手段の確保が有効

損害をこうむって設備・施設が使用不能となったとき、代替性のある設備・施設を準備しておく(あるいは転用する)ことが有効とされます。被災した本店に代わり、支店に拠点を移して営業を継続した、店舗が被災して販売ができなくなったとき、それまで併用していたネット販売を主軸に据えて営業を継続できたなどの例があります。停電した場合などの調剤業務の継続方法については、「薬局BCP作成ガイド」(東京都福祉保健局)がさまざまな代替手段を提示しています。

5)分散化の効果

代替手段と同じく効果が期待されるのが分散化です。在庫商品の保管場所が分散していたためその多くが被災を免れた、取引先や顧客の多くが被災地外にあったので売上げが減少することなく事業を継続できた、事業所が地域的に分散していたため代替機能が維持できたなどの例があります。分散化は防災対策として有効ですが、経営上の合理性や効率性との兼ね合いで、経営判断が必要なテーマです。

6)復旧資金の確保

被災した建物や設備の復旧など、事業の再建に当たっては資金が必要です。再建資金として国・県や市町村の低利融資、利子補給、補助金などの制度があり、これらを活用した事例が多くみられます。被災地の中小企業支援機関には特別相談窓口が設置され、各種の相談に応じてくれます。これらの支援制度があったから「『もう一度やってみよう』という気持ちになり、精神的な支えになった」という経営者の声があります。

7)取引先からの支援

一企業の被災であっても、それが担うサプライチェーンが寸断されると、被災は地域を越えたさまざまな業種の企業活動に影響を及ぼします。このため、取引関係にある企業間では、取引の回復・継続に向けた協力や支援が行われます。災害にあった場合、取引先の企業に対し積極的に支援を求めることが必要な場合があり、その際どのような支援を求めるのか検討しておくことも重要です。

8)従業員の勤務体制

電気・ガス・水道など各種インフラが復旧していない状況下では、従業員の勤務体制についても通常とは異なる対応が必要になります。水道が復旧するまでは午前中だけの勤務にするという例がみられました。また、業務ではなく自宅の復旧を優先させた結果、翌月には従業員全員が通常勤務に戻ることができた例もありました。

9)情報発信の効果

ホームページは、被災後も更新を続けることが重要です。積極的な情報発信が反響を呼び、さらに支援につながることが多いといいます。ブログとホームページに被災地の状況写真を載せたところ、月に7,000件の閲覧があり、その効果で外部からの支援が増えたという例があります。積極的な情報発信は、事業の継続を図る上で大いに効果があるといえます。

10)耐震措置や訓練の効果

BCPは、計画本体と、これに附属し、さまざまな事前対策を施すための「実施計画」、緊急時の「対応マニュアル」及び「チェックリスト」などから構成されます。緊急時に備えて実際に効力を表すのは、これらの附属文書です。これらに基づき、建物や設備に耐震措置などを講じ、また、訓練やチェックを定期的に実施することが重要です。これらの結果がBCPにフィードバックされ、BCPはその実効性をより高めてゆくことができます。

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